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2005.11.16

索道入門4 ~索道の輸送能力 その1

公共交通機関利用の際に気になる要素はいろいろある。居住性や所要時間も重要だ。広い意味で言えば所要時間にも含まれる「混雑」を気にする人も多いだろう。

混雑の度合いを決めるのは、輸送能力だ。そこで、今日は索道の混雑を決める輸送能力を書いてみよう。

つるべ式の井戸のように大型の搬器(客車)2台が交互に行き来する交走式と、リフト・ゴンドラのように小型の搬器(椅子・客車)が続々と発車する循環式では、輸送能力の算定方式が異なる事はご理解いただけると思う。ここでは、まず循環式から考えてみたい。

○リフト・ゴンドラの最高速度と輸送能力

リフトに並んでいると、次のようなボヤキを時々耳にする。

「同じペアでもクワッドみたいな高速ペアにしてくれたら、並ばなくて済むのに」

これって、ほんとだろうか。ある意味では正しいかもしれないが、基本的には間違っている。

実は、リフトの輸送力は速度で決まるのでなく、何秒間隔で搬器が来るかで決まる。ペアリフトの場合、最小間隔は6秒間隔と決まっている。つまり、そのリフトは、設計上の最高速度で運転している限り、最高速度が速かろうと遅かろうと、6秒おきにしか椅子が来ないのだ。つまり、設計最高速度で運転した時に6秒間隔になるように、搬器はロープに固定されてるわけだ。例えば、最高速度が1.6m/sのペアリフトなら9.6mおきに、2.0m/sなら12mおき、4.0m/sなら24mおきという具合だ。

6秒間隔という事は、1分間に10回、1時間で600回椅子が発車するわけだからペアリフトは1時間に1200人運べる事になる。設計速度で運転されている限り、鈍足のリフトであろうが、カッ飛んで行く高速リフトであろうが、ペアリフトなら1時間に1200人しか運べないのだ。つまり冒頭のボヤキは正しくないのだ。

しかし、何らかの事情で減速運転をしていたなら輸送力が下がる。自動循環式リフトにする事で減速運転の必要性が解消するなら、ボヤキはあながち間違いとは言えないのだ。

実は、固定循環式ペアリフトでは、必ずしも設計速度で運転されていない。この形式のリフトでは、最高速度は2.3m/Sまでが認められる事になっているが、この速度では初心者はかなりの確率で足を強打し、下手をすると乗り損なう。さらに降り損なう事も多い。両足の使えるスキーならまだしも、スノーボードではさらに乗降が難しいようだ。

メーカーも事業者もそのあたりは承知していて、2.3m/s設計のリフトは上級者コースに架かるリフトに限定して、中級者以下のコースでは2.0m/sや1.8m/sの仕様にしているケースが多かった。

スキーヤーが主流の時代はこれで良く、ボーダーが登場した当初は、彼らの乗り降りの時だけ減速する事で対応できていたが、最近のようにボーダーが多いと2.0m/sのリフトですら常に減速運行というケースを多く見かけるようになってきた。

確かにこういうケースでは、自動循環式に変えれば減速の必要がなくなり、設計上の輸送能力を落とすことなく営業できる。しかし、これは速ければたくさん運べるという事ではなく、乗降場で速度が遅いからという点を誤解しないで欲しい。

高速リフトでも、天候の関係などで減速運転をしていると、輸送能力は落ちる。

「それなら固定循環式でも最高速度を落とす改造をすればよいじゃないか」と思われた人も多いだろう。そのとおり、所定の輸送力を落とさないため最も簡単な方法は、自動循環式に架け替えではなく、固定循環式のまま最高速度を落とすことなのだ。

スペックダウンだから簡単だと思うかもしれないが、これが意外と難しい。

先に、書いたように最高速度を落とすという事は、搬器の間隔を詰めるという事だ。つまり、必要な搬器の台数は増える。搬器の台数が増えるという事は、ロープを太くしないとならない可能性もある。さらに、モータ出力もアップしないとならないかもしれない。

「低速にするのに出力増強とは?」と思われるかもしれないが、実はリフトで最もパワーが必要なのは、最高速度での運転ではなく、起動の時なのだ。乗客を乗せていないなら造作もないことだが、乗客を乗せたまま止まった時の再起動が最も条件が厳しい。スキー場のように上り線のみしかお客が乗っていない時が最悪の条件なのだ。搬器台数が増えるという事は、この条件がより厳しくなるという事だ。

つまり、同じ固定循環式なら高速よりも低速の方がよりパワーが必要である可能性が高い。さらに、支柱の索受(ロープを支える滑車)を増やす必要があるかもしれない。索受の数は、その支柱が受け持つ荷重によって変るので、搬器台数が増えるという事は荷重も増えるのだ。

つまり、速度を落とすのはスペックダウンではなく、アップグレードになるのだ。そうそう簡単に、最高速度を下げる事はできないのだ。

(つづく)
2005年11月16日執筆

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