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2006.07.05

索道の種類~複線交走式普通索道(1)

複線交走式普通索道とは、動かないロープである支索(鉄道でいうレールに相当)にぶら下がった2台(または2群)の搬器が、曳(えい)索とよばれるロープに牽引されて上下する方式である。搬器は曳索の両端に固定され、井戸のつるべのように片側の搬器が上がれば反対側の搬器が下がるという構造だ。

いわゆるケーブルカーの索道版で、ロープウェイというとこの構造を思い浮かべる人が多いだろう。ケーブルカーと違うのは、山麓側ににも曳索と対になる平衡索というロープが取り付けられ、下がる搬器は自重に頼るのみではなく、上る搬器に下へ引っ張られる構造になっていること。こうでないと下りの搬器の動きの制御が難しいためだ。

こういう構造を利用して、原動機を山麓に置くケースもある。この場合は搬器の山頂側・山麓側の双方とも曳索と呼ぶ場合もあるようだ。

以前は、曳索・平衡索の搬器への固定方法はソケット方式であったが、近年では握索機方式が認められるようになったため、エンドレスとなった曳索を用いられる事が増えてきた。

それでは、さらに細分化して解説しよう。

○三線交走式普通索道(1支索2曳索)
日本における交走式普通索道ではもっとも一般的な形式だった。以前の法令では、曳索は2本以上という規則があったために、重量的に支索が1本で済む場合には、必然的に1支索2曳索がミニマムな構成となるためだ。なお、支索が1本切れても残りのロープで支えるだけの強度が必要と定められており、曳索のみでも支えられるようになっているのでどうぞご安心を(笑)
 曳索・平衡索と搬器(走行機)との連結はソケット方式で行うのが一般的だ。ソケット方式とはロープの端部を茶せん状にほぐし、溶融した合金に鋳込んで作製したロープソケットとロープを固着。このソケットを固定する方式である。

YAHIKO
本方式の例(弥彦山ロープウェイ:新潟県)
走行機下部にソケットが見える

筆者の知る限りでは、実績では61人が定員の上限だったようだ。

○三線交走式普通索道(2支索1曳索)
近年の交走式では主力の方式。国内登場の当初は、法令改正前であったので特別の構造の認可により登場した。
曳索と搬器の固定方式にソケットを用いずに握索機を用いる事で曳索をエンドレスロープ化し、曳索の信頼性を向上させることにより登場した。信頼性の向上は、握索機方式とすることで搬器固定位置を比較的容易に変更できる点を活用したロープ疲労を均等化と、搬器を外しロープのみの運転が可能になった事で、精度の高いロープ検査が容易となったことで実現した。

HAKODATE
本方式国内第一号(函館山ロープウェイ:北海道)

2支索とすることで、搬器の揺れ防止が図れるほか、懸垂索受の採用が可能となるために曳索の垂下量を抑えることが出来るので、横風に強くなるというメリットもある。

KANZANJI
懸垂索受の例(舘山寺ロープウェイ:静岡県)

搬器定員は、今のところ126人乗りの函館山ロープウェイが最大である。国内のロープウェイで最高速の10m/sを誇る八海山ロープウェー、富良野ロープウェーも本方式だ。

○四線交走式普通索道(2支索2曳索)
以前の大型の交走式では標準的だった。国内の実績では、最大は166人乗り(湯沢高原ロープウェイ、竜王ロープウェイ)まである。2階建て搬器で有名な新穂高ロープウェイや国内で初めて10m/sの運転を行った(ただし支柱通過時は減速)雲辺寺ロープウェイも本方式である。
筆者の知る限りでは握索機を使用する2曳索タイプはないが、1曳索では上限があるはずで、大型化の必要があれば握索機を用いた新世代の2支索2曳索方式が登場するかもしれない。

HAKOHDA
四線交走式の例(八甲田山ロープウェイ:青森県)

○五線交走式普通索道(2支索3曳索)
別府ロープウェイで以前採用していた方式。世界初の101人乗りという大型索道だったため、やむを得ず世界で初めて本方式を採用した。ロープ性能の向上により、1999年に四線交走式に改造され姿を消した。その後同方式を追随した設備があったかどうかはわからない。もしかしたら唯一無比の存在だったかのかもしれない。

BEPPU02
現在も三列の索輪が残る

BEPPU03
現用の2本の曳索の中央にソケットが接続されていた痕跡が残る


◎複線交走式の特徴

大型の搬器を使えることが最大のメリットである。観光地で団体客の誘致を考えた場合、観光バス1台分以上の乗客が一度に乗れることは優位に働く。その反面、大型の搬器では内側に乗せられた乗客は眺望を楽しむことが出来ず、観光ロープウェイとしては厳しい評価が出るケースもある。これに対する解の一つが新穂高ロープウェイの2階建て搬器であろう。
輸送力は1時間当たり何回運行できるか決まり、同じ長さ・同じ定員なら所要時間+乗降時間が短い方が輸送力が高い。しかし、ピストン運行で運ぶわけなので、輸送能力の限界は意外と低く、長大線路の輸送力は小さい。
交走式の国内最長路線は、長野県の湯田中ロープウェイ(3156m)であるが、西武グループは同ロープウェイ売却の方針を長野県に伝えており、今後の存続が気になる。なお、第2位徳島県の太龍寺ロープウェイ(2775m)である。
ちなみに支柱のスパンが一番長いのは、香川県の雲辺寺ロープウェイで、第2号柱と第3号柱の間が1882mある。さらにワンスパン(支柱がない)のロープウェイでもっと長いのは、富山県の立山ロープウェイで1710mだ。
このように地形にさえ恵まれれば、長大区間を支柱無しで建設できることも、本方式の特徴である。
また停留場機械も自動循環式に比べれば単純で、イニシャルコストやランニングコストの面で有利である。

長くなったので、とりあえず残りは後日。

執筆日:2006年7月5日

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