東京索道は、東海工務所出身の技術者土持治が独立し、1937年に設立したメーカーであるが、現在の東京索道の設立は1991年10月となっているので、なんらかの理由であらたに会社を設立し、旧東京索道の事業を移譲されたものと思われる。創業は1919年と称し、これは創業者の土持治が東海工務所において紀和索道に着工した年である。
索道のほかに主にダム工事で使われるケーブルクレーンを手がけており、1950年ごろまではダム建設で大型貨物索道が使われることが多かったので、おそらくはこれらの土木分野での売り上げが多かったものと思われる。
旅客索道では、昭和30年代に多くの交走式を手がけている。1968年開業の大雪山ハイランド(旭岳)の山上区間(現在はリプレースにより廃止)を最後に交走式の実績はなく、その後は循環式の実績しか残していない。
東京索道製交走式ロープウェイ:防府大平山ロープウェイ1959年3月20日運輸開始
余談であるが、石原裕治郎主演映画「白銀城の対決」(1960年・日活)で裕治郎が演じた主人公伊庭技師の勤務先である東洋索道は東京索道がモデルと思われ、同作品の舞台となった建設中のロープウェイは志賀高原ロープウェイと思われる。主人公が索道メーカー勤務という映画・ドラマは、この作品が唯一かもしれず索道ファンは必見だ。ちなみに日活系のCATV・スカパーのチャンネル「チャンネルNECO」の11月放映プログラムに入っていたので、久々の鑑賞のチャンスだった。以前にVHSのセルビデオもあったので、興味がある人は中古で探す手はある。ちなみに筆者は20年以上前にテレビで見た限りだ。
閑話休題。
同社が、固定循環式特殊索道(リフト)にいつ頃参入したかはっきりわからないが、1971年に登場した固定循環式ペアリフトの国内第一号である高尾山リフトは同社による架設であるので、それまでにシングルリフトで多くの実績を残していると思われる。循環式は、三線自動循環式には参入しなかったが、フォンロール社(スイス)と技術提携し、単線自動循環式には参入した。普通索道(ゴンドラ)の第一号は1982年建設の富良野ゴンドラ(現在は交走式にリプレース)、特殊索道(デタッチャブルリフト)の第一号はニセコヒラフの第6トリプル(現・キング第3トリプル)である。
東京索道製デタッチャブルリフト第1号:グラン・ヒラフ キング第3トリプルリフト1985年12月7日運輸開始
索道ではないが、箱根登山鉄道鋼索線(ケーブルカー)のリプレースにあたり、同社がフォンロール社に発注したため、現在の同線車両には東京索道の銘板があり、公式サイトにも同線の画像が掲載されているが、どこまで関与しているか不明だ。少なくとも箱根登山鉄道関係者が執筆した鉄道ピクトリアルのリプレース工事紹介記事には、フォンロールの名前は出てくるが、東京索道に関しては一字も出てこない。
いつ頃からかはっきり判らないが、総合商社トーメンの傘下に入り、横浜市金沢区鳥浜町に本社と工場を置いていたが、トーメンが自社の建て直しのため事業の見直しを図った際に系列から離れ、現在では日本ケーブル系の資本が入っている。また、本社工場も売却したようで、現在は東京都千代田区に本社を置き、製造は日本ケーブルに外注しているようだ。冒頭に書いた会社の交代とこれらの資本の入れ替えや本社の移転などの関係は、筆者の調査不足で解明できていない。
三菱や川鉄が参入する直前の索道工業会が全国展開四社+地域限定一社というバブル初期の時代には、日ケ・安索の二強に対し、東索・太平が二弱という感じであり、売り上げ比は4:4:1:1とか5:3:1:1などと言われていた。
業界全体での新設索道数が最盛期の東京索道受注数にも及ばない状況が永らく続いている状況では、近年の架設実績は皆無と思われ、おそらくはメンテナンス業務が索道分野での主力業務になっているものとおもわれる。さらに技術提携先のフォンロール社が日ケの提携先であるドッペルマイヤー社の傘下に入った現状では、大型物件を受注することが可能なのかよくわからない。
◎趣味的観点から見た製品特徴
このように日ケ・安索ほど観察した個体数が少ないので、傾向というよりも個体差というべきレベルの観察結果であるが次のような特徴があるといえよう。
まず支柱の作業アームの上部水平材が省略されているか、やや下がった位置にあり、角のような形状になっている。ただ、太平索道も一時期、似た様なデザインを採用していたので、これだけでは判断は出来無い。さらに今では、安索や日ケと似たデザインになっている。
東京索道製リフト支柱例:津別スキー場 第1ロマンスリフト作業アームの上部水平部材がトップの位置にない
ゴンドラ搬器は同社製第一号の富良野ゴンドラではガングロフ製だったようだが、その後はCWA製を採用している。同じCWAのキャビンを採用していてもサスペンダーと搬器の接合部にメーカーの特徴があり、ここで見分けられる。
東京索道製ゴンドラ搬器例:津別ゴンドラCWA製6人乗りキャビンを採用
固定循環式リフト原動緊張装置の機械カバーは日ケのものに良く似ている。特に機械室タイプでない背が低いものは遠目にはそっくりに見えるが、日ケではカバーは原動装置とともに移動するのに対し、東索ではカバーは固定されカバーの中で摺動するタイプが多く、長いカバーが多い。ただ、カバーも摺動するタイプも確認している。
リフト搬器は、独自のデザインが認められるが、何種類かあるので、どれを標準タイプと呼んだらよいのか難しい。あとは、読者の皆さんで観察を重ねて識別眼を養って欲しい。
執筆日:2006年12月4日
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