番外編:2006年度の索道動向:普通索道編
2006年度はまだ3ヶ月以上あるが、索道界としてはスキー場の新設索道が明らかになるこの暮れで、その全容がほぼ明らかになったと言っても過言でないだろう。そこで現時点で筆者が掴んでいる索道の動向を新設情報中心にまとめてみた。
正直言って、かなり抜けがあると思われるので、コメントでどんどん補足いただけるとありがたい。
まずは普通索道編。
◎新規開業普通索道
○ニセコ グラン・ヒラフ
・エースセンターフォーゴンドラ ニセコ高原開発(株) 2006.8.1運輸開始
※2006年度新設の普通索道は無いと思っていたら、とんだ伏兵が潜んでいた。→の「索道ニュース」でもお伝えしたように8月1日から10月9日まで、エース第2センターフォーリフトを流用してヒラフゴンドラのキャビンを使い、普通索道として営業した。白馬47とタングラムが2004年夏営業で導入したものと同様なクワッドの利用法だが、キャビンは夏冬兼用で使う点が新たな試みである。
◎休廃止普通索道
○稚内公園
・稚内公園ロープウェイ 稚内市 1975.7.27運輸開始
※日本で最北の索道・ロープウェイである稚内公園ロープウェイが、利用者減と設備老朽化のため2006年3月31日限りで営業を終えた。最終営業日から2006年4月1日付の廃止と思われる。
この結果、日本最北のロープウェイは、大雪山層雲峡・黒岳ロープウェイとなっている。
○ニセコ東山スキー場
・ニセコ東山ゴンドラ (株)プリンスホテル 1982.12.15運輸開始
※2005-2006シーズンでは休止と伝えられ、休止中のままコクドからプリンスホテルに譲渡された本ゴンドラは、キャビンを流用したアート作品が札幌近郊の公園で展示されており、プリンスの公式サイトのゲレンデマップからも抹消されている(ニセコ三山の共同サイトでは休止中として掲載)ので、休止中としても実質的には廃止と思われる。太平索道がミューラー社との提携で導入した単線自動循環式の最後の1本であった。
○ARAI MOUTAIN&SPA
・新井ゴンドラ 新井リゾート(株) 1993.12.19運輸開始
※運営会社である新井リゾートマネージメントの特別清算により、今シーズンの営業を断念。資産は外資系投資会社が保有しており、施設の保全のみを行って来シーズンからの運営者を探している。
安全索道製定員10名の立ち乗りゴンドラ。立ち乗りとしては、野沢温泉長坂(2代目)に次ぐ国内第2号機である。
○牛岳温泉スキー場
・牛岳ロープウェイ 富山市 1981.12.18運輸開始
※設備老朽化のため本ロープウェイでアクセスするユートピアゲレンデを今シーズン休止と告知している。このまま廃止の公算が高い。安全索道製交走式で、ワンスパンで谷を渡る。
○三峰山(埼玉県)
・三峰ロープウェイ 秩父鉄道(株) 1964.4.29運輸開始
※設備老朽化のため2006年5月19日から2007年5月31日までの予定で休止している。これを報じる中では、収支面で復旧に及び腰な様子も読み取れたので、発表どおり休止を終えるかどうか予断を許さない状況と思われる。
○箱根(神奈川県)
・箱根ロープウェイII期線 箱根ロープウェイ(株) 1960.9.7運輸開始
※三線自動循環式から複式単線自動循環式フニテルへの架け替えのため、2006年6月1日から2007年5月31日までの予定で運休中。2007年6月1日から新線の営業開始予定。2005年3月に宮島ロープウェイが二線自動循環式に改造され、後述の通り奈良ドリームランドスカイウェイが3月に休止されたため、この休止により日本独特の技術であった三線自動循環式は全て姿を消した。
○朝日村営鈴蘭シャンツェ(岐阜県)
・鈴蘭グループゴンドラ 朝日村 1996.2.10運輸開始
※『平成17年度鉄道要覧』には休止中として掲載されていたが、平成18年度版からは記載が無く、2005年度中、もしくは2006年4月1日付で廃止されたものと思われる。なお、朝日村は2005年2月1日付で高山市と合併しており、平成17年度版に朝日村として掲載されていること自体が問題であった。同シャンツェは現役ジャンプ台であり、2007年2月開催の第19回全国高等学校選抜スキー大会会場にも使われる予定である。運輸開始年から判るように老朽化とは考えにくく、運営コストが負担であったための廃止と思われるが、メーカーの太平索道が廃業した事も関係するかもしれない。高山市が2006年度に鈴蘭シャンツェの指定管理者を募集していたが、委託業務に索道は含まれておらず復活の目はなさそうだ。
本ゴンドラは、単線固定循環式を採用している点が珍しく、また普通索道完乗を目指す人には、競技関係者のみの利用となっていたために「乗れない」事で知られていた。
『鉄道ピクトリアル2001年4月増刊号 千年の京にありて』掲載の「単線固定式普通索道について」という記事が、本ゴンドラをまとめて紹介する数少ない文献と思われる。
○比良山スキー場
・比良ロープウェイ 比良索道(株) 1962.8.16
※すでに本ブログでも取り上げたとおり2004年3月末を最後に休止していたが、『平成17年度鉄道要覧』には休止中で掲載されていたものの平成18年度版には記載がない。スキー場ゲレンデの復元作業の目途が立ったため、2005年度中か2006年4月1日付でリフト共に正式に廃止の手続きがとられたものと思われる。
○びわ湖バレイ
・アルプスゴンドラ (株)びわ湖バレイ 1975.10.31運輸開始
※株式の大多数を持つ名鉄が、保有する全株を日本ケーブル系のNCリゾートに譲渡すると発表し、その報道の中で来季からはゴンドラを大型ロープウェイに架け替えると報じられた。筆者は、ゴンドラとは別位置にゴンドラの夏営業を行いながらの新線建設となると予想するが、今シーズンの終了と共に営業を休止する可能性も排除できない。営業を行った単線自動循環式普通索道では国内で2番目、現存する中では最古の施設であるので、機会があればこの冬に乗っておきたい。
○奈良ドリームランド
・スカイウェイ (株)ドリームパーク 1961.7.1運輸開始
※『平成18年 鉄道要覧』に平成18年8月31日廃止予定として掲載されていたが、機器故障により2006年3月に運休し、そのまま再開することなくドリームランド廃園を迎えた。故障したのは制御盤らしく、代替の部品もないために簡単に修理とはいかなかったようだ。架設当時の機械がほぼそのまま残る三線自動循環式だったので、その廃線は惜しまれる。
○南レク御庄公園
・御荘湾ロープウェイ 愛媛県 1977.8.10運輸開始
※設備老朽化と山頂駅付近を通る有料道路の無料化が決まり利用者減が見込まれるため、2006年3月31日限りで営業を終えると決定。実際は、3月27・28日の2日連続で宙吊り事故(27日は搬器が山麓駅構内で脱線、28日は4号柱脱索検出器誤作動)を起こし、29日に運休して総点検を行い、その結果、30・31日は運休となったために3月28日が最終営業日になった。稚内公園と同様、2006年4月1日付の廃止と思われる。
本ロープウェイは日本ケーブルが自社開発した単線自動循環式の最後の1本であり、この廃止によって純国産の単線自動循環式は姿を消した。
本ロープウェイが廃止され、2006年度に立山山麓ゴンドラが富山県から富山市(ないしは同市3セクの大山観光開発)に移管されたため、県営の普通索道は消滅した。
執筆日:2006年12月25日
加筆日:2006年12月26/27日
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