カテゴリー「複線自動循環式」の記事

2006.07.25

索道の種類~複線自動循環式普通索道

複線自動循環式とは、支索に支えられた搬器を曳索により移動させるシステムで、ヨーロッパでは二線自動循環式として支索1本、曳索1本という形で発展したが、日本では曳索2本以上という法令上の制限があったので、支索1本曳索2本という構成の三線自動循環式として独自の発展を遂げた。

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三線自動循環式:箱根ロープウェイ二期線

三線自動循環式は、戦前においては安全索道などが実用化を目指して開発を進めていたが実用化されることはなく、1956年に日本ケーブルが架設した蔵王高原ケーブルにより世界初の実用化が行われた。安全索道なども後に続いたが、その多くは後に単線自動循環式や交走式に架け替えられた。しかし、線路条件や需要により他の方式への変更が難しい路線では、旧施設を生かしながらのリニューアルが行われ、谷川岳ロープウェイ・御在所ロープウェイでは輸送力増強と共に二線自動循環式への改造が行われ、箱根ロープウェイでは三線自動循環式のまま輸送力増強工事が行われた。

このなかで、宝塚ファミリーランド・奈良ドリームランドではほぼ原形のままで運転が続けられていたが、アトラクションとしての人気低下と設備老朽化のために運転を取りやめ、それを追うように遊園地自体も閉鎖された。(ドリームランド閉鎖は今夏)

さらに遊園地を除くと唯一、原形のままで運転されていた宮島ロープウエー紅葉谷線が、2005年3月に老朽化対策として二線自動循環式に改修されている。

これにより、箱根ロープウェイの二期線が世界唯一の三線自動循環式となったが、一期線に続いて複式単線自動循環式に架け替えるため本年6月から運休したため、三線自動循環式普通索道は消滅した。

国内では、二線自動循環式で新設された普通索道は登場しなかったが、前述の通り三線自動循環式をリニューアルして、谷川岳・御在所・宮島で登場している。この内、前二者はスピードアップと発車間隔の短縮により輸送力増強を合わせて行っているが、宮島は接続する獅子岩線の輸送力の問題があるためか、輸送能力の向上は行わなかった。なお、谷川岳は2005年に複式単線自動循環式に架け替えられた。

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三線自動循環式握索装置:箱根ロープウェイ二期線

三線自動循環式では、それぞれ方式の違う2台以上の握索装置を用いることが法令で定められていたため、重力式とねじ式の併用が多かった。

停留場出発時にロープ速度に同調して握索するという点では単線自動循環式と同様だが、加速装置の動力源はロープではなく、モーターにより加速するチェーンで押し出す方式が多かったようだ。航空機を発射するカタパルトのような感じだ。余談になるが、ロープ駆動のモノレールであるスカイレールでは、駅発車時のロープへの速度同調をリニアモーターで行っており、駆動方式は違うもののシステムとしては三線自動循環式に似ている。

到着側では、懸垂機をはさむような形のブレーキ装置で減速・停止させるシステムが多かったようだ。

支索を使うので大スパンへの対応が可能であり、単線自動循環式の技術を導入すれば、以前に比べて、高速化や輸送能力の増強も可能と思われるが、本線中での圧索が難しいこととフニテルに比べると風に弱いという弱点があるために、この方式が新規に採用される可能性は低いものと思われる。

国内で現役の普通索道には、あと三線往復式があるが(晴遊閣大和屋ホテル)、筆者は未乗であり、仕組みがよくわからない。支索によって支えられ、2本の曳索で巻き上げている事はわかるのだが、エレベーターのように山頂で巻き取ってしまうのか、交走式のようにロープは山頂で折り返して山麓に向かっているのか不明だ。

執筆日:2006年7月25日

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2006.06.07

奈良ドリームランド スカイウェイ ~夢の国はもう目覚めない

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奈良ドリームランド スカイウェイ
事業者名:株式会社ドリームパーク
公式サイト:http://www.nara-dreamland.co.jp/
所在地:奈良市法蓮佐保山二丁目
キロ程:452m
支柱基数:4基
高低差:0m
最急勾配:不明
輸送能力:240人/時
搬器台数:57台
速度:1.5m/s
回転方向:時計
動力:電気 15kw
許可年月日:1961年6月30日
運輸開始年月日:1961年7月1日
種別:普通索道
方式:1支索2曳索三線自動循環式
搬器定員:4人
奈良坂駅:原動停留場 車庫線
法蓮町駅:緊張停留場 車庫線
索道メーカー:安全索道
搬器メーカー:不明
鋼索メーカー:不明

観察日:2006年5月31日

2002年春のスキー場巡りのレポートの途中だが、緊急?レポートをお送りする。

右側の「索道ニュース」に掲載したとおり奈良ドリームランドの閉園が決まった。ここには三線自動循環式普通索道の「スカイウェイ」があったが、ひっそりと3月頃に運休しており、実質的に一足先に永眠してしまったようだ。昨年頃から悪い予感がしていたので、行こうとは思っていたのだが、雪がある間はスキー場を優先していたのがあだとなった。こうなる事が判っていれば、奥美濃への行き帰りの途中にでも寄ればよかった。

悔いていても始らないので、ホームページで配布している入園無料チケットの最終日である5月31日に出かけてみた。この入園無料チケット、閉鎖が発表されたのでもう配布を止めるかと思っていたら、現在、7月2日まで有効のバージョンが配布中である。週末のみの営業であるがお手軽にお名残り入場のチャンスだ。

今回は筆者にしては珍しく電車で向った。このところ寝不足気味だったので、寝ていこうという魂胆があったのと、駐車料金が1200円と効果なのが車を敬遠した理由。JR奈良駅から近鉄奈良を経由するバスは複数の系統がドリームランド前を通るので、本数はそこそこあるが、どうも時間帯に偏りがあるので、バスで行かれる方は調べておいた方がよいだろう。

トップ画像の岩山をトンネルで抜ける線路は、カリフォルニアのディズニーランドを意識していたのは誰の目にも明らか。下のモノレールも2~3年前に運休してしまい、復活する事無く閉園になる。

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これが衝撃的な告知だ。しかし、筆者の注目は最下段の1行“索道ドリームランドロープウェイ”だ。一般利用者向けの呼称で「索道」を使うのは珍しい。

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高低差が無いので、山麓停留場・山頂停留場とも呼べずどちらが起点でどちらが終点かもわからずどう表現するか迷っていたら、『日本近代の旅客索道』(コロナ社)の巻末資料に、区間を「法蓮町~奈良坂」と記載されているのを発見。園外の地名から類推して、北側に位置するこちらが奈良坂駅と思われる。原動装置はここにある。右側にあるのは木造ローラーコースターの「飛鳥」。

このように複線自動循環式では1号柱・最終柱にあたる構造物が停留場機械と一体化されており、出枠と呼ばれる。この出枠に不自然な勾配がある構造が見て取れるが、これは試験勾配と呼ばれ、握索機がロープを確実に握索したかどうかを確認するために設置されていた。不確実だと、ここで滑って出発できないという仕組みだが、乗り心地の上ではあまりよい構造とはいえない。単線自動循環式にはあまりない構造であるが、この名残で1号柱・最終柱を出枠と呼ぶ関係者も少なくない。

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さて、奈良坂駅では乗り場入口・出口はともに階段下でロープが張れているので、停留場内部の様子はよく見えないが、外周列車から見ると、このようによく見えた。スカイウェイ見学のために外周列車に乗ることをお勧めする。

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支柱銘板が地上近くにあるのも珍しい。奈良坂駅~1号柱~人工岩山~4号柱~法蓮町駅という並びなので、起点は奈良坂で、人工岩山内に支柱が2本ある事がわかる。支柱は、コンクリート製。日本ケーブルのゴンドラ・クワッドに使われていた鋼板製角錐形支柱によく似たシルエットの角錐形だ。

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こちらが法蓮町駅。左側に見える出口に通じる階段は、やはりロープが張られて入れないが、右側にある(画像では写っていない)階段は、上に出した「営業終了」の看板は掲出されているが閉鎖はされていない。ここの上にある乗り場前の広場には、比較的新しいテーブルと椅子が置かれており、休憩している人もいたので立ち入り禁止ではないと判断して上がってみた。どうもこの広場は、外周列車の廃駅「幻想の国ステーション」の跡地&駅前広場跡のようだ。つまりスカイウェイは駅前ロープウェイだったのだ。

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乗り場はこういう感じ。これぐらい離れて見ると、デザイン的に少々古く臭いものの搬器は綺麗で、窓も大きく、快適そうに見える。

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ただ、アップで見るとちょっとくたびれて見える。

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これが握索機部分のアップ。握索装置は重力式とねじ(スプロケット)式なので、左側がねじ式と思われる。

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興味深かったのが、この概念図。交走式ロープウェイでは見たことがあったが、三線自動循環式では初めて見た。・・・といっても、筆者が実際に乗った三線自動循環式は伊豆長岡かつらぎ山と宮島だけなので、サンプル数が少なすぎるのだが。

入園料を払ってまで休止ロープウェイを見るのに抵抗がある人は、前述の無料チケットが使える期間がラストチャンスだ。

執筆日:2006年6月7日

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