カテゴリー「三菱重工業」の記事

2006.12.19

索道メーカー 三菱重工業

日本を代表する重工メーカーである三菱重工業は、郵便汽船三菱会社が官営長崎造船所の払い下げを受けたことに始まり、三菱造船を経て1934年に三菱重工業となった。第二次世界大戦での敗戦により、財閥解体の対象となり、1950年に西日本重工業・中日本重工業・東日本重工業に三分割されたが、1964年に名目上は中日本重工業に2社が合併する形で現在の三菱重工業となった。そのため会社としては、中日本重工業設立の1950年が設立年となっている。

このように伝統ある重工業メーカーであるが、索道分野への参入は遅く、リゾートブームとなった昭和末期にガラベンダ社(スイス)とリフトエンジニアリング社(アメリカ)と提携、1989年に初めての実績を今金町ピリカスキー場とマウンテンパークのペアリフトで残した。この頃の同社は、リゾート施設の一体受注を狙っていたようで、圧雪車「ベルベア」の開発販売を行ったほか、広告を見る限りでは人工降雪システムへの参入も目指していたようだ。他にも汎用の技術であるコージェネシステムやナイター施設、ITV装置などがスノーリゾート関連の商品ラインナップに並んでいた。

しかしながら、この戦略は不発に終わった様で、ベルベアの販売も終了し、日本索道工業会からも撤退している。

ガラベンダの提携製品として建設した、単線自動循環式の新神戸ロープウェイや交走式の旭岳ロープウェイという大型施設は今も盛業中である。

しかし、リフトエンジニアリング社との提携製品であるYANリフトの自動循環式は、一時は合理的な設計と優れたデザインで一世を風靡したものの構造的な問題があったようで、本国のアメリカでも問題が多発し、北米でのスキーリゾートブームの落ち着きも伴ってリフト社自体が廃業、三菱が建設した製品も故障の多発で稼働率が低く、デタッチャブルリフトはすでに全基がリプレースされている。

ホワイトピアたかす 第2クワッドリフト
三菱YANのデタッチャブルクワッド:ホワイトピアたかす 第2クワッドリフト
同形リフトとしては最後の現役機であったが、昨シーズンに日ケ製クワッドにリプレースされた

網走レークビュースキー場 第2リフト
三菱YANの固定循環式リフト:網走レークビュースキー場 第2リフト
三菱YANでも固定循環式は何基かが現役中

ガラベンダ社は以前から日ケの提携先であるドッペルマイヤー社と提携関係にあったため、(三菱重工が現在、どの程度メンテに関与してるかわからないが)同社との提携製品のメンテは、それほど問題がないものと思われる。そのためかどうか判らないが、新神戸ロープウェイは日ケ系の会社が指定管理者になり三菱製のゴンドラの運営を行っている。

これまでに取り上げた、日本ケーブル、安全索道、東京索道、太平索道、小島製作所、JFEメカニカル、三菱重工の7社が(筆者の知る限り)平成になってから日本索道工業会に加盟していた実績のあるメーカーである。次回以降で、加盟実績のない現役メーカーを取り上げたい。

執筆日:2006年12月19日

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2006.04.15

サンメドウズ バードリフト ~休止中の希少種

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サンメドウズ バードリフト
事業者名:清里ハイランドパーク(株)
スキー場名:サンメドウズ大泉清里スキー場
公式サイト:http://www.sunmeadows.co.jp/
所在地:山梨県北杜市大泉町西井出
キロ程:614m
支柱基数:10
中間停留場:なし
高低差:不明
最急勾配:不明
輸送能力:不明
搬器台数:不明
速度:不明
回転方向:時計
動力:電気
許可年月日:1990年7月26日
運輸開始年月日:1990年12月29日
建設年:1990年
種別:特殊索道
方式:単線固定循環式
搬器定員:2名
山麓:原動油圧緊張
山頂:終端
索道メーカー:三菱重工業
鋼索メーカー:不明

観察日:2006年3月24日

現在休止中のペアリフト。正式名称は第3リフト。

索道要覧では「休止中」の注釈はなく、多くのゲレンデガイドでも記載されてるが、ここしばらくはまったく動いていないようだ。

スキー場開設時に設置された三菱重工業製の機械がそのまま残る。運転するつもりがなかったので架け替えなかったのか、自動循環式と違い固定循環式には特に問題がなかったので架け替えなかったのか不明である。

カバーするのは主に上級コースで、山麓部の緩斜面をいとわなければパノラマリフトで代替できるので、来場者が多くないと利用価値が低いリフトであるのは確か。

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米国リフトエンジニアリング社との技術提携によるリフトで、停留場機械や支柱は独特の形状をしている。筆者が確認している同形のリフトは、ホワイトピアたかす第3ペアリフト網走レークビュー第2リフトがあり、マウンテンパーク津南のリフトも同じではないかと睨んでいるが、このほかにはあったとしてもかなり少ないと思われる。すでに提携先の会社はなく、三菱重工自体も索道事業に力が入っているとは思えないので、今後は減る一方と思われる。

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この支柱も作業アームなど独特の形状で、3輪という索輪も珍しい。

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このリフトも夏山営業兼用の高低切替え式の支柱になっており、アームが小径の円筒柱2本にはさまれる形で上下する。この構造は、日本ケーブル製のキューピットバレイ第3ペアリフトの支柱と似ている。

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山頂の終端機械も独特の形状だ。


執筆日:2006年4月15日

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2006.03.25

網走レークビュースキー場 第2リフト

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網走レークビュースキー場 第2リフト
事業者名:網走市
スキー場名:網走レークビュースキー場
公式サイト:http://www.city.abashiri.hokkaido.jp/web/PD_Cont.nsf/0/D2E05C989E24A7E349256CB600022AD8?OpenDocument
所在地:北海道網走市字呼人
キロ程:900.15m
支柱基数:13基
中間停留場:なし
高低差:181.30m
最急勾配:不明
輸送能力:1200人/時
搬器台数:131台
速度:2.3m/s
回転方向:反時計
動力:電気
許可年月日:1993年9月24日
運輸開始年月日:1993年12月20日
建設年:1993年11月
種別:特殊索道
方式:単線固定循環式
搬器定員:2人
山麓:原動緊張油圧
山頂:終端
索道メーカー:三菱重工業
鋼索メーカー:不明

観察日:2006年2月6日

網走市街地の南側にある天都山の網走湖側の斜面に開設されたスキー場。国道39号線からのアプローチ道路もたやすく、また天都山の稜線近くを縦断する道道からスキー場山頂付近にアプローチできる。駐車場は山麓・山頂両側にあるが、山頂側では多少(ロープトゥ1本分くらい)のハイクアップが必要なので、駐車場が空いていれば山麓側の方が楽。

山頂から山麓までは5本のコースがあり、尾根コースや谷コースなど変化に富んでいる。上級コースと案内されているコースでも中級者で十分に対応可能で、中級者なら半日は十分に楽しめる。市民スキー場とは一線を画した規模といえよう。

第2リフトとあるように、以前は第1リフトもあり、リフト2本で営業していた時期もあったようだ。

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眺望もなかなかよく、山頂が完全に稜線の上なので、裏側になる原生花園・知床半島方面のオホーツク海も見える。一方コースからは、このように凍結した網走湖を見下ろす事ができる。

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1回券はこのとおり210円。筆者は1回券で2回しか滑らなかったが、2時間券1200円、4時間券1700円というのはなかなか魅力的な券種・価格の設定だ。1日券2940円も安いとは思うが、さすがにまる一日居たら飽きそうな気がする。

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山麓停留場の後に見える三角屋根がセンターハウスで、食堂やレンタルスキー、リフト券窓口がある。その左手、一段下がった位置が山麓駐車場。右端に一部が写っているのが、すでに廃止された第1リフトの原動装置。

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ここのリフトの最大の特徴は、実績が非常に少ない三菱重工業製であること。三菱は、スイスのガラベンタ社、米国のリフトエンジニアリング社(YAN)と技術提携して索道業界に参入したがリゾート開発ブームの終焉のためか、ほとんど実績を残していない。筆者が掴んでいる範囲では、ガラベンタ社系の製品として新神戸ロープウェイ(ゴンドラ)、大雪山旭岳ロープウェイ、サエラスキーリゾートのクワッド、リフトエンジニアリング社系の製品としてはキッズメドウス(現サンメドウズ)、ホワイトピアたかすの一部のリフト、バラキ嬬恋(現 パルコール嬬恋)があるが、特に後者はリフトエンジニアリング社の廃業があったためにデタッチャブルは全て架け替えられた。また、どちらとの提携か不明なリフトが今金町ピリカとマウンテンパーク津南にある。

ここのリフトは、三菱YANらしくホワイトピアたかす第3ペアとまったくの同形態である。

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脚立やスノーダンプが邪魔で、半分しか仕様が見えなかった。こんな事にこだわるお客は筆者ぐらいだろうから、しかたがないか(泣)

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搬器のフレームの形状はホワイトピアたかす第3ペアと同じに見えるが、座板と背板の形状と材質が異なる。一人分ずつ独立していたWPたかすの方が高級に見えるが、一人乗車の際に中央に乗りにくいので、独立形状が良いとは一概に言えない。支柱の作業アームの形状も変り、他の国内メーカーと近い形になった。

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山頂の終端装置もWPたかすと同じ三菱YANの独特の形状。過剰装飾でコスト高でないのか他人事ながら気になる。


執筆日:2006年3月25日

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2005.03.02

ホワイトピアたかす 第3ペアリフト ~ペアリフトの希少種

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ホワイトピアたかす 第3ペアリフト
事業者名:トーカイ開発株式会社
スキー場名:ホワイトピアたかす
公式サイト:http://www.whitepia.jp/index.html
所在地:岐阜県郡上市高鷲町鷲見
キロ程:742m
支柱基数:13基
中間停留場:なし
高低差:194m
最急勾配:不明
輸送能力:1200人/時
搬器台数:108台
速度:2.3m/s
回転方向:反時計
動力:電気
許可年月日:1992年8月24日
運輸開始年月日:1992年12月14日
建設年:1992年10月
種別:特殊索道
方式:単線固定循環式
搬器定員:2名
山麓:原動油圧緊張
山頂:終端
索道メーカー:三菱重工業(YAN)
鋼索メーカー:不明

観察日:2005年1月22日/2006年3月23日


第3ペアリフト起点は旧第2クワッド起点よりもさらに下がった位置にあり、センターハウスよりも下がった位置に起点をもつリフトが2本もある(あった)というのは、このスキー場のレイアウト上の特徴だろう。このリフトで滑るコースは大半が緩斜面ながらリフト起点に滑り込むところだけ急斜面。いちおう迂回コースがあり、コース図ではこちらは初級者コースになっているがそれほど難度に差は無く、対象とする利用者が絞りきれていない。

ただし、中間地点に大き目のパークがあるので、パーク利用者には利用価値が高い。


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メーカーはリフトエンジニアリング社(YAN)と提携していた三菱重工相模原で、固定循環式ペアリフトながらYANクワッドの縮小版で、まるでチョロQYANクワッドと呼びたくなる形状だ。1号柱、最終支柱の機能を停留場機械に取り込んでいるのは、クワッドと同じ設計思想だ。固定循環式にこのデザインは過剰装飾のように見え、デタッチャブルのコンパクトに見える停留場機械とは正反対のように感じる。

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他のスキー場にこのタイプのリフトがあるという話は聞かないが、今シーズンは動かしていないというサンメドウズ(旧キッズメドウズ)のペアリフトは、もしかしたら同タイプかもしれない。

網走レークビューやサンメドウズ第3ペア(休止中)で同タイプを確認できた。マウンテンパーク津南のリフトも三菱重工相模原なので、同形状かもしれない。

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搬器は日ケのモデルEや安索の新型に似ている。ただし、座面や背板は一人分づつ独立している。定員乗車のときは快適だが、一人乗車では中央に着席できないので、傾くのが少々不快だ。


執筆日:2005年3月2日 加筆修正:2006年3月29日

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2005.03.01

ホワイトピアたかす 第2クワッドリフト ~絶滅危惧種=廃止済み

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ホワイトピアたかす 第2クワッドリフト
事業者名:トーカイ開発株式会社
スキー場名:ホワイトピアたかす
公式サイト:http://www.whitepia.jp/index.html
所在地:岐阜県郡上市高鷲町鷲見51
キロ程:1276m
高低差:259m
輸送能力:2400人/時
速度:不明
動力:電気
許可年月日:1992年8月24日
運輸開始年月日:1992年12月14日
種別:特殊索道
方式:単線自動循環式
搬器定員:4名
山麓:油圧緊張
山頂:原動
索道メーカー:三菱重工業(YAN)

観察日:2005年1月22日

ホワイトステーションよりやや下がった位置から、ゲレンデトップから南西に延びる尾根に向かって架けられたリフト。尾根からセンターコースに降りる中上級者コースが多いホワイトピアにおいて、これらを効率的に滑るには利用価値が高い。

終点は隣接する鷲ヶ岳スキー場のトップと隣接しており、同スキー場のオーロラ第3クワッドの山頂停留場もよく見えるが、共通券はなく、間違って入り込まないように仕切ってある。別料金でも構わないので両方で滑りたい人は、鷲ヶ岳からのアプローチの方がよい。なぜなら、鷲ヶ岳のリフト券はICチップなので、最後に保証金を返却してもらう必要があるからだ。

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さて、このリフトの最大の特徴は、三菱重工業製・・・・しかも、米国リフトエンジニアリング社と技術提携したYANタイプであることだ。YANの斬新なデザインと独創的な握索機は、業界で大きな話題となったが、国内の導入例は少なく、リフトエンジニアリング社の廃業(倒産?)は今後のメンテに不安を残す結果となって架替が進んでいる。

筆者が知る限りでは、導入されたのはキッズメドウズ・菅平・バラギ嬬恋とこのリフトで、現在残るのはバラギ第2クワッドとこのリフト。その上、04/05シーズンは、当初からバラギ第2クワッドが故障のため運休しており、おそらく国内で稼動する三菱YANのクワッドはここ1本だったと思われる。

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山麓駅機械は、このように他社製リフトなら1号支柱に負わせる部分を併せ持ち、停留場に要する平坦部面積を低減しているものと思われる。

なお、三菱重工業ではリフトエンジニアリング社のほか、ガラベンダ社(スイス)とも提携している。

(2005年3月1日執筆)

2005年12月に日本ケーブル製のデタッチャブルクワッドに架け替えられた。
2006年3月29日追記

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