ルスツリゾート ウエストペアリフト ~トラス支柱のペアリフト
ルスツリゾート ウエストペアリフト ~トラス支柱のペアリフト
事業者名:加森観光(株)
公式サイト:http://www.rusutsu.co.jp/winter/
所在地:北海道虻田郡留寿都村字泉川
キロ程:637.119m
支柱基数:12基 トラス支柱(一部 鋼管円筒型)
高低差:194.0m
最急勾配:不明
輸送能力:900 人/時 ?
搬器台数:93台
速度:2.0m/s ?
回転方向:時計
動力:電気 75kw
許可年月日:1972年6月6日
運輸開始年月日:1972年12月3日
建設年:1986年11月
種別:特殊索道
方式:単線固定循環式
搬器定員:2人
山麓:原動重錘緊張
山頂:終端
索道メーカー:ヤマト索道(株)
鋼索メーカー:不明
観察日:2007年1月28日
ウエストMtに2つあるピークの間にある斜面の内、ゴンドラがある側に架かるペアリフト。幅のあるややきつめの中斜面であるダイナミックコースに平行しており、中級者には楽しめるが、ほとんどの部分は第2クワッドでもカバーできるため本リフトの利用者は少なめである。
さて本リフトの特徴は、1986年製という表示であり、かつペアリフトにも関わらずトラス支柱であること。前身の第4Aリフトの改造でペア化したためだそうだ。第4Aリフト時代の傾斜長は607mであり、ペア化と共に30mほど延長されている。ペアとなったのちもウエスト第4Aペアリフトとして営業していたが1997年にウエスト第1A/Bリフトが第1クワッドにリプレースされたのに伴い名称が整理され、本リフトはウエストペアリフト、ウエスト第5リフトはウエストタイガーリフトと改称された。
山麓の原動緊張装置は、形状やその方式からおそらくペア化の際の新設と思われる。さらに1号柱は鋼管柱であり、2号柱との間もほぼ水平であることから、おそらくは現1号柱の位置に旧山麓停留場があり、現2号柱が旧1号柱であったと思われる。
原動緊張装置にはスペックの掲示があり、上述のスペックもこれを参考にしているが、矛盾が多く、これは鵜呑みにできない。そこでスペックを検証してみた。
まず、ロープゲージと傾斜長からロープ全長は約1285.5mであると計算できる。搬器台数が93台であることから、搬器間隔は13.82mとなる。2cmの差であるので、これに関しては表示は正しいと考えて差し支えないだろう。
輸送能力が900人/時ということは、搬器の発車間隔は8秒となる。
一方、運転速度が2.0m/sということは発車間隔は6.9秒となる。
発車間隔が8秒で正しいなら運転速度は約1.7m/sとなるはずだ。
発車間隔が6.9秒ならば、輸送能力は1042人/時となるはずだ。
つまり、輸送能力か発車間隔か運転速度のいづれかが正しい表示になってないと思われる。この画像ではわかりにくいが、輸送能力の「9」と搬器間隔「7」秒にはあきらかに修正の痕跡もある。
一般的にこの年代のペアリフトは発車間隔が6秒というケースが多く、搬器間隔13.8mというのは、当時認められていた最高速度である速度2.3m/s・発車間隔6秒の場合の搬器間隔である。あくまでも筆者の推測であるが、2.3m/sという仕様を採用したものの、もっと遅いほうが良いという事になり、搬器数はそのままで減速・輸送能力減少改造を行ったか、将来的に速度向上を行う想定で搬器間隔13.8mを採用したかのいずれかと思われる。シングルの改造という視点から考えると、搬器数をむやみに増やせないという構造上の問題があったのかもしれない。
ということでこの掲示されたスペックは、輸送能力か速度のいづれかが虚偽であるのは間違いないと思われる。「Yahoo!スポーツ」の情報では、本リフトの輸送能力は1042人/時となっており、これは上述の速度2.0m/s、発車間隔6.9秒という仮定の計算結果と一致するので、これが正しい可能性が高そうだ。
あとは、索道メーカーとして交走式ロープウェイなどの実績も残す大和索道と、このヤマト索道の関係も気になるが、この時代のメーカーについての資料を持ち合わせないので、さっぱり判らない。
トラス支柱の時代には、このような大掛かりな作業アームはあまり見かけなかったので、これはペア化にあたっての増設かもしれない。また、角パイプ構造となっているアームもトラス支柱時代にはあまりみかけない方式だ。おそらくはトラス構造の支柱本体だけを流用し、アームや索受はペア改造時に交換されたものと思われる。
山頂停留場の終端装置は、1986年建設という年代に見合った近代的な構造で、トラス支柱とは不釣合いだ。画像でわかるように、ここも最終支柱だけ鋼管柱であり、延長が行われたか、旧施設の緊張装置が最終支柱と一体化していたなどの理由で、改造時に新設された支柱と思われる。
この支柱の作業アームの形状や搬器の形状は、同年代の東京索道の製品と良く似ており、なんらかの節点があったのか、たんなる偶然か興味深い。
大規模な改造が行われたとはいえ、実質的にはルスツで最古の設備であり、ペア化の時点を新設年と考えてもウエストゴンドラに次ぐ古さであるので、何らかの変化が見られる可能性が高いように思われる。索道ヲタ的には、実に趣のある現状のまま使い続けてほしいが、一般スキーヤーにはトラス支柱というだけで印象が悪いと思われ、スキー場全体を考えるなら、架替が妥当だろう。ということで、興味をもたれた方は早めのご訪問をお勧めしておく。
執筆日:2007年3月5日
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